このタイトルを冠する作品は数多ある。楽曲に限らず、小説でも。
何に別れを告げるのか。
それはそれぞれだと思う。では、この曲では?
出典: https://www.uta-net.com/song/269275/
概観
少しだけ達観したような、やや厨二病というか。
この歌詞は英語でありながら、しっかり対訳が作られている。
There is no one can understand me truely
I do not go out and I will keep silence
どうせ うまく説明できないし 外にも行かず 黙っているよ
英詞だけ読むと、『どうせ誰も僕を本当に理解してくれない』みたいなやや厨二がかった雰囲気を感じてしまう。少なくとも私はそう解釈していた。
しかし対訳を見るとどうやら違うようだ。
自分をうまく表現できず、齟齬が生まれる。故にもう今は外界との交流を絶って閉じこもるよ、ということになりそうだ。
きちんと読んでみて、韻の関係もあるとは思うが、歌詞として"don't"ではなく"do not"を使うのは強調表現かもしれない。現に、次の節で"don't"は出てくるし、自分の殻に閉じこもることに対する強調なのだろうか。
Everyone is mania in general
You don't have time to sleep
For to know others
躁病がデフォルト 他人に夢中で 寝る暇もない
これは逆に対訳を見ると主語がわからなくなる。「躁病がデフォルト」なのは自分ではなく、みんななのだ。もっと緩く捉えると『みんな元気だなあ、元気すぎるなあ』になるのか。
そんな不特定多数を理解するために時間を費やしていたら、夜も眠れないよと。
It's more complex than how i used to thought
But already I know
The start is living life to the end
思っていたより複雑だった 既に知っている
はじまりは死ぬまでを生きる事だろう
おお、急に哲学的だ。
でもわかる。人生って気付かぬうち、物心つく前から始まっているのだから。色々とわかってきた頃には『生きている意味』みたいなものにぶち当たって、複雑で訳のわからない世界に立って想う。
結局、死ぬまで生きることが意味なのかもしれないと。
Everyone is mania in general
You don't have no time to sleep
For to know others
躁病がデフォルト 他人に夢中で 寝る暇もない
改めて復唱。
前述の部分があることで、『こんな死ぬまで生きるために君たち頑張っているの?』と思うと正に『こいつら狂ってやがる!』という感性になるのもまあわかる。
しかし、改めて見ると「デフォルト」なんて英詞に含まれていないのにズレていないと感じるのは、和製英語の浸透を感じざるを得ない。
I can't reach well is this another next anxiety?
A disruption and blinder
There is nowhere to go
うまく届かないんだ また 次の不安か?
分裂と目隠し その先はないんだ
ここから、原曲では日本語と英語が入り乱れる。それが不安や自分の気持ちそのままみたいなものを表しているんだろうか?
原曲では「その先はないんだ」としか歌われないが、英詞と照らすと『行く先がない』のだとよくわかる。
しかし、「うまく届かない」は冒頭の「どうせ うまく説明できないし」に繋がる。思っていることと伝えられることのギャップが苦しみに繋がる。
「分裂と目隠し」も、『伝えたいことと実際に伝わることのギャップ』と『伝わらないが故に自分の殻に閉じこもって目隠しをすること』を端的に言い表しているのか。
そうなって、もはや『行く先はない(=見えない)』ということになるのか。
感想
ただただ、暗かった。
でもこれって、誰もが思うことでは?と思ってしまった。長い人生、どこかでこんな風に思うことがあるのでは?と。
思ったことが伝わらない。もはや全て煩わしくなって、自分の世界だけでよくなって、どうすればいいかわからない。
初めに『厨二病めいた』という言い方をしてしまったが、これはもう、かくあるべき成長過程ではないかと思う。
とはいえ、この感じを深めると本当にうつ病のような感じにはなってしまう(かくいう私もうつ病を経験しているので、自分の意見が当たり前でないことは重々承知ではある)ので、なんとも言えないのだが、共感のある歌詞ではあると思った。
で、この歌では何と別れを告げたのか。
恐らく世俗、世間だろうと表面的には感じた。「外にも行かず 黙っているよ」からはそう感じざるを得ない。
しかし、これが内省的な話であるならば、もはやこの歌詞全体の世界観に別れを告げているのではないかとも思った。
行き先はない。それでも死ぬまで生きていこう。わかってもらえないことがあっても、なんでも生きていくためにはこんな考え方からも『さようなら』を告げて生きていく。そんな考え方や、ある種の『強さ』があってもいいのではないだろうか。